こんにちは、カウベテです。
今回は繁殖指標についてお話したいと思います。
繁殖指標とは牛群の繁殖成績を数値化したもので、分娩間隔や受胎率が思い浮かぶ人が多いと思います。
今回の記事では、①覚えておいてほしい繁殖指標5つ、②もっとも重要な指標とその理由を解説します。
②は完全な私見ですが、学びのある内容になっていると思います。
最後まで読んでいっていただけると幸いです。
それでは参りましょう。
覚えておいてほしい繁殖指標5つ
覚えておいてほしい5つの繁殖指標はこちらです。
すべて知ってるという方はかなりの繁殖猛者ですね。
知っている方は復習代わりに、知らない方はぜひ覚えていってもらえると嬉しいです。
では順番に解説していきます。
分娩間隔(空胎日数)
もっともよく使われる繁殖指標の一つでしょう。
この指標は、「前回分娩から今回分娩までの日数」または「今回分娩から次回分娩までの推定日数」を意味しています。
今回は後者について解説します。
計算方法は、(受胎牛の次回分娩予定日-今回分娩日)を平均することで求められます。
ちなみに、空胎日数は分娩間隔-285で求めます。指標として意味することは同じです。
この指標は一年間の子牛生産を見通すために必須の指標なので、経営の面でも重要性の高い指標といえます。
受胎率
こちらもよく使われる指標なので、知っている方が多いと思います。
この指標は「種付をした場合の受胎する確率」を意味します。
計算方法は、受胎牛の数÷受胎牛全体に対して行った種付の総数です。
たとえば受胎牛が3頭(A, B, C)いて、それぞれが1回、1回、3回の種付で受胎したとしましょう。
この場合、3 ÷(1+1+3)= 60%と計算できます。
未受胎の牛は計算に含めないのがポイントです。
発情発見率
お次は発情発見率、少しマイナーな指標です。こちらも受胎牛のみを計算の対象とします。
この指標は「理論上発生している種付の機会をどのくらい発見しているか」を示します。
計算方法は、受胎牛全体に対して行った種付の総数÷受胎牛の理論上の総発情回数です。
理論上ってなんだよ!ってなりますよね、もう少し解説します。
まず、この計算には2つの前提があります。
①分娩を終えた牛(黒毛和種を想定)は40日で発情周期が回帰し、種付可能な状態になる。
②21日ごとに発情が回帰し、種付の機会がやってくる。
つまり理論上発生した発情の回数は、空胎日数が40日の牛は1回、61日の牛は2回、82日の牛は3回とカウントしていくことになります。
これを計算式で示すと以下のとおりです。
受胎牛の理論上の発情回数=(空胎日数-40)÷21 +1
これをすべての受胎牛で合計したのが発情発見率の計算に用いる”受胎牛の理論上の総発情回数”になります。
たとえば、先ほどの受胎率で例に出した農場で、Aが50日、Bが70日、Cが50日・71日・134日で種付したとしましょう。
計算は以下のようになります。頭の中で計算の手順だけ追ってみてください。
Aの理論上の発情回数=(50-40)÷21 +1 = 1.48
Bの理論上の発情回数=(70-40)÷21 +1 = 2.43
Cの理論上の発情回数=(134-40)÷21 +1 = 5.48
牛群全体の理論上の総発情回数 = 1.48 + 2.43 + 5.48 = 9.39
発情発見率 = (1+1+3)÷ 9.39 = 53.2%
いかがでしたか?
少し難しいので、今は概念だけでも覚えていってください。
妊娠率
次もまたマイナーな指標ですが、ここまで理解できていればそれほど難しくありません。
こちらは「理論上、一度発情が来るたびに未受胎牛が受胎する確率」という指標です。
また理論上か!と思われるかもしれませんが、考え方はさっきと同じです。
計算方法は、発情発見率×受胎率です。かなりシンプルですね。
この計算方法は、指標が意味するところを考えれば分かりやすいと思います。
発情で種付する確率 × 種付して受胎する確率 = 発情で受胎する確率という考え方です。
先ほどの農場の例でいえば、計算は以下の通りです。
60% × 53.2% = 31.9%
ちなみに妊娠率32%というのはかなりの優良農場です。
妊娠率32%がどういう状態かというと、例えば牛群が100頭で全頭が一斉に分娩した場合、以下のようになります。
分娩から40日後…100×32%=32頭が受胎
分娩から61日後…68×32%=22頭がさらに受胎
分娩から82日後…46×32%=15頭がさらに受胎
妊娠率についてイメージできたでしょうか?
JMR
最後は更にマイナーな繁殖指標、JMRです。
JMRはフランス語のJours(日)Moyen(平均)Retard(遅れ)の略で、どのくらい種付や受胎に遅れがでているかの指標です。
計算方法は、未受胎経産牛のペナルティ合計 ÷ 経産牛頭数です。
ペナルティとは、分娩後に種付や受胎が遅れると溜まっていく点数だと思ってください。
ペナルティは以下の4段階で変化していきます。
これをすべての牛でカウントし、その総和がペナルティとなります。
つまり分娩後、40日を過ぎると日々ペナルティが加算されていき、受胎しない限り減りません。
JMRを安定して低く保っておくには日々の適切な管理と観察が欠かせません。
もっとも重要な繁殖指標とは
今回紹介した5つの繁殖指標の中で、私の思うもっとも重要な指標はなんでしょうか。
それは、JMRです。
ここからは、なぜ私がJMRを最重要と位置づけているか解説したいと思います。
興味があればぜひ参考にしてください。
最重要と言えるたった一つの理由
私の思うJMRの最も重要な特徴、それは即時性です。
即時性とは、時間の隔たりがないこと、つまり牛の変化に対して数値の反応が早いということです。
牛群の調子が良いときは下がり、調子の悪いときは上がる、この反応の早さが牛群管理には非常に重要です。
なぜなら、異常が起きたときに早く手を打つことができれば問題を最小限に抑えることができるからです。
早期発見が大事というのは病気の発見も繁殖の異常も同じということですね。
ではなぜJMRは即時性が高いのか。それは、未受胎牛を計算の対象にしているからです。
他の4つの指標では、受胎牛を計算の対象としています。
分娩間隔(空胎日数):”受胎牛の”今回分娩から次回分娩までの日数
受胎率:”受胎牛の”種付が受胎につながった確率
発情発見率:”受胎牛の”発情が来たときに種付ができた確率
妊娠率:”受胎牛の”発情が来たときに受胎した確率
受胎牛を計算の対象とする指標では、現在から過去約1年間という長いスパンの成績が示されます。
これではたとえば飼料設計を変更したとき、調子が上がっていても下がっていても数値に反映されるまで時間がかかり、即時性の高い評価ができません。
一方でJMRは、未受胎牛をもとに計算するため、現在から過去2~6ヶ月程度の短いスパンの評価がしやすくなっています。
他の指標を気にするよりJMRが変化していないかを気にしたほうが評価の精度は上がるはずです。
特に何か牛群に対して変化を加えたときは、JMRを低く保てているか、こまめにチェックしましょう。
他の指標はあとから付いてくるものです。
まとめ
今回のまとめです。
いかがでしたでしょうか。
今回の記事を参考に、JMRを計算して繁殖成績の向上に役立てていただければ幸いです。
ありがとうございました。
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