子牛の死亡原因で最も多いのが胎児死(死産)です。
死亡原因のうち約半数を占めているといわれています。
また、分娩に立ち会えるかどうかで胎児死の確率は大きく変化します。
適切な準備と立ち会い、正しい判断で健康な子牛生産の第一歩を踏み出しましょう。
準備するもの
- 分娩房と充分な敷料(できれば稲ワラ)
- 牽引用バンドまたはチェーンとハンドル
- 消毒液(パコマなど)入りのぬるま湯
- タオル(特に冬期間は必ず!)
- カウヘルパー(滑車)(人手が少ない場合)
- 人工呼吸器
分娩は、時間との戦いになることもあります。
そんなとき、必要になってからものを用意するようでは手遅れとなり、子牛が虚弱になったり、最悪死亡してしまう場合もあります。
必要なものはあらかじめ用意しておきましょう。
まずはじめに準備すべきものは、きれいな分娩房と敷料です。
分娩予定日の2週間程度前から分娩房へ移動しましょう。
できれば稲ワラなど乾燥しやすい敷料を使用しましょう。
もみ殻や細かい繊維の草を敷く場合もありますが、濡れた子牛にまとわりついたり、舞い上がって気道を刺激することになるのであまりオススメはしません。
残りの5つの道具については、経過と対処法の部分で詳しく説明しますが、子牛の生死を分ける大事なものです。ぜひ用意しましょう。
分娩の兆候
外貌の変化
分娩兆候の中でも早めに兆候が出はじめ、見つけやすいのが外貌上の変化です。
- 外陰部のゆるみ
- 広仙結節靭帯のゆるみ
- 乳房の張り
陰部のゆるみとは、言葉の通り、外陰部がシワの寄った状態からダランとゆるんだ状態をいいます。
外陰部からの粘液もみられるようになります。
広仙結節靭帯のゆるみとは、尻尾の付け根から斜めにお尻につながる靭帯が柔らかく沈み込むようになる状態をいいます。
外見だけでも尾根部が陥没しているのがわかりますが、靭帯を軽く下に押し込んでみると、正常よりも深く沈むのが感じられると思います。
乳房の張りは分娩兆候の中でもっとも分かりやすいポイントです。
普段から観察しているという方も多いでしょう。
しぼんでいた乳房が大きく、張りのある状態になったら分娩は目の前です。
経験豊富な農家さんは「乳頭が光ってる」と表現したりもします。
内診、直腸検査での変化
獣医師が分娩までの日数を予測するときには、外貌上の変化に加え、内診や直腸検査により状態を判断することが多いです。
内診では、外陰部から膣に手を入れ、主に産道の開き具合をみます。
私は産道が指1本分くらいでは分娩まで3日以上、2本分くらい開いているとあと2~3日くらい、3本分で1~2日くらいと見当をつけています。
自分で手を入れる方もいるかと思いますが、その際は外陰部の洗浄、消毒をしっかり行い、潤滑ゼリーなどで手の滑りを良くしてから入れることをオススメします。
直腸検査では、肛門から手を入れ、胎児の体勢や大きさなどを観察します。
胎児が大きすぎないか、逆子になっていないか、産道の近くに来ているか、すでに死亡していないかといった状態を診断し、必要に応じて分娩誘起などの処置を行います。
分娩兆候が見えず、獣医師を呼ぶ場合は分娩予定日から何日過ぎているかを参考にしましょう。
私は経産牛なら7日、未経産牛なら5日予定日を過ぎたら呼ぶようにしてもらっています。
ただし、諒太郎や福増など胎児が大きくなりやすい種の場合はそれぞれ2日早めにみるようにしています。
状態を診て欲しいと言われ手を入れてみたものの、すでに胎児過大で難産確定なんてこともあるためです。
体温の変化
分娩のはじまりは目に見えないところから。母牛の体温の変化です。
分娩のおよそ24時間前から体温が下がり、半日近くにわたって平熱から0.5~1.0℃下がります。
マメに体温を測っている方であれば分かりますが、平熱と言っても牛によって、また時間によってバラバラです。
分娩予定日が近づいてきたら朝と夕方の一日2回体温を測り、いつもよりあきらかに低いと思ったら翌日には分娩できるよう準備しましょう。
また、牛温恵などの膣に体温計を留置することで常に体温を計測し、体温が下がると通知が来るシステムもここ最近でかなり普及してきました。
こういったICT機器を活用するのも労力の削減に大きく貢献してくれるでしょう。
この頃になると乳房が大きく張ってきたり、中には便がゆるくなる、食欲がなくなるなどの兆候がみられることもあります。
まとめ
まずはきれいな分娩房と難産のときに必要な道具を準備しましょう。
分娩兆候には外貌上の変化、内診でわかる変化、体温の変化があります。
これらを総合して分娩日を予想できるようになると仕事の効率もあがるので、常に意識して牛を見るといいと思います。
今回は以上です。
ありがとうございました。
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