【子牛の下痢治療】原因と補液の必要性について解説

子牛
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「獣医が何をしているのか分からない。」そう思われたことはありませんか?

これから何をするつもりなのか、何をしているのかちゃんと説明しない獣医師は意外と多いと思います。

私も説明しているつもりで、前提が伝わっていなかったり、一足飛びに話をしてしまっていたり、説明になっていないこともしばしば。。

今後2回にわたって、子牛の下痢を治療する際に獣医師が何を考え、どんな治療をしているのか解説します。

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何が原因か

まずは子牛が下痢をして元気がないとき、そもそも原因が何なのかを考えます。

下痢の原因といえばミルクや餌の消化不良、もしくはウイルスや細菌などの感染症を思い浮かべることが多いと思います。しかし、そもそも下痢が病気の本体かを見極める必要があります。

例えば、カゼを引いて発熱をしていると消化管の動きが異常を来し下痢をすることがあります。他にも、熱中症になっていることや、同枠の牛が体調不良で食欲がなくて配合飼料をドカ食いしてしまっていることもあるので原因の特定は慎重に行います。

下痢が悪さをしていると判断したら、次に食餌性か、感染性かを診断します。

食餌性下痢

食餌性の下痢の原因は大きく以下の3つにわけることができます。

  • 母乳(代用乳も含む)
  • 異常発酵
  • 消化吸収不良

母乳性の下痢はその名の通り、母牛の母乳が原因で下痢をしています。

具体例としては、母牛が栄養不良で体脂肪を燃やしてエネルギーに変えているときが想定されます。母牛の血液には体脂肪の成分が流れ、母乳の成分として脂肪分が多くなります。それを消化しきれずに子牛が下痢をします。

他にも、母牛に発情が来ると乳成分の変化が起こって下痢をしたり、代用乳を与えている場合でも濃度や成分が変化することで下痢を引き起こすことがあります。

異常発酵や消化吸収不良は子牛の未熟な消化管機能により引き起こされます。

単純に説明すると、消化しやすいものを食べすぎれば異常発酵を起こし、消化しにくいものを食べすぎれば消化不良を起こします。

配合飼料を与えすぎていると第一胃の中で過剰に発酵します。消化管内でガスが溜まったり、悪臭の下痢便を排泄することがあります。

逆に離乳前の子牛が母牛と一緒に稲ワラなどの固い粗飼料を大量に食べていると、消化不良による下痢をするだけでなく、第四胃潰瘍や第四胃幽門狭窄のようなより重篤な疾病につながることもあるので注意が必要です。

食餌性の下痢は一般に重症化しにくく、原因を排除すれば改善することが多いですが、餌や乳の吸収効率が下がるので、できるだけ避けたいものです。

感染性下痢

感染性の下痢には主にウイルス性細菌性寄生虫性が知られています。いくつか代表的なものをご紹介します。

ウイルス性の下痢は冬場に多くみられるのが特徴です。子牛の下痢を引き起こすウイルスの中でもで代表的なのがロタウイルスです。症状は比較的重いですが、適切に対処できれば死亡率はそれほど高くありません。

細菌性の下痢は暖かい時期に発生しやすく、重症化しやすいものが多いのが特徴です。中でも大腸菌性の下痢は生まれて早い時期に感染し、死亡率も高いため、確実な初乳の摂取や敷料を清潔に保つことにより予防することが重要です。

寄生虫性の下痢でもっとも問題になりやすいのはクリプトスポリジウム症かと思います。脱水症状が重く、感染を食い止めるのが非常に難しいです。一度出てしまったら担当の獣医師や家畜保健衛生所と連携して徹底的な消毒をする必要があります。

補液は必要か

補液(点滴)というと、脱水している子牛を元気にするためにやるものとイメージする方が多いのではないでしょうか。

脱水の補正はもちろん重要な補液の役割ですが、それだけではありません。その他に、酸塩基平衡の補正栄養補給があります。

それぞれについて解説します。

脱水の補正

下痢をしている子牛では、お尻から多くの水分が失われていきます。

このとき見逃せないのは、出ていくのは水分だけでないということ。ナトリウム(Na)やクロール(Cl)といった電解質も失われています。

なので、脱水を補正するときは真水を点滴するのではなく、生理食塩水などの電解質を含んだ薬剤になります。

実際に使っている補液剤は次回くわしく紹介します。

酸塩基平衡の補正

酸塩基平衡とはざっくり説明すると、酸性とアルカリ性のことです。pHという数値でその度合が示されますが、人や牛の血液のpHは7.4(弱アルカリ性)に保たれています

下痢をしていると、一般的にpHは下がっていきます。つまり酸性になるのですが、これをアシドーシスといいます。

この下がってしまったpHを元に戻すことも補液の重要な役割です。

栄養補給

これは説明するまでもないかもしれませんが、補液には栄養剤も入れていることもよくあります。

ブドウ糖、ビタミン類、重症の場合はアミノ酸などを必要に応じて投与します。

まとめ

今回は、獣医師が子牛の下痢を治療するときに考えていることを紹介しました。

次回は、補液の内容の詳細について、どの補液剤をどのような根拠で使用しているのか解説します。

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