子牛の発育を阻害する最も大きな要因の一つが肺炎です。
中でも慢性肺炎を患っている子牛にはどんなに栄養豊富な餌を与えても良好な発育は見込めません。
今回は肺炎の発生要因と予防策、発症しても悪化させないための方法について解説します。
原因
他の感染症でもいわれていることですが、要因は大きく「個体の要因」、「病原体の要因」、「環境要因」に分けられます。
順番に解説していきます。
子牛の要因
子牛の要因は生まれる前から気をつけないといけない要素もあるので、母牛の妊娠中、もっと前の種付け時から十分に注意しましょう。
- 遺伝的要因
- 初乳摂取の不足
- 栄養不良
遺伝的要因は、進歩しすぎた品種改良と近縁血統の種付けが主な原因です。
乳量や枝肉重量や肉質に重きをおいた品種改良が進むにつれて血は濃く、牛はひ弱になっていきます。
そこで更に近縁血統の牛を種付けすれば更に感染症には弱くなります。
F1牛を飼ったことのある方は分かるかもしれませんが、彼らは驚くほど病気に強いです。
初乳摂取については子牛のケア前編でもお話したとおり、子牛が小さいうちに持っている免疫力は初乳に依存する部分が大きいです。
必要な量をしっかり飲ませるようにしましょう。
不足していそうなときはストマックチューブを使うこともあるので、初乳摂取の観察は注意深くする必要があります。
栄養不良については母牛の妊娠中の栄養と、出生後の子牛の栄養という2つの場面を考える必要があります。
母牛の妊娠中は、当然のことながら母牛が栄養を供給することで胎児は成長することができます。
この段階で適切な栄養を与えていないと出生後の子牛の体力に差がでてきます。
特に妊娠末期には配合飼料を増量する必要があります。
分娩予定日の3週間前から1週間につき1 kgずつ増量し、分娩直前に3 kg食べているように調整しましょう。
子牛の栄養で問題になるのはほとんどが哺乳期から離乳期にかけてかと思います。自然哺乳の場合は母牛に任せるしかありませんが、人工哺乳の場合はもっとも適切な哺乳量や人工乳(スターター)の与え方を追求しましょう。
ちなみに私は、和牛子牛の場合以下のように哺乳期を管理するようアドバイスしています。
- 最大哺乳量:一日9~10リットル(粉量で約1,200~1,400 g)
- 哺乳期間:90日
- 離乳時の固形飼料摂取:スターター1 .5kg+乾草0.5kg
一般的な哺乳量よりもかなり多めに設定しているので、離乳とのバランスを考えながら調整すると良いと思います。
哺乳期間を90日間確保できない場合は少し量を減らして、固形飼料を積極的に摂取させたほうがいいかも知れません。
病原体の要因
病原体には、代表的なものにウイルス、細菌、マイコプラズマがあります。
ウイルスは一番はじめに感染することが多く、いわゆる”カゼ”の症状を示すのはほとんどがウイルスを原因としています。
40℃以上の高熱、透明な鼻水、だるそうにして食欲不振といった症状を示すのは典型的なウイルス感染症の症状です。
ちなみにこのような症状だけを示しているうちは鼻や喉の炎症なので、(併発していなければ)まだ肺炎とはいえません。
咳や肺雑音のような明らかな肺炎症状が出ていたら細菌に感染している可能性が高いと考えられます。
というのも、牛の肺炎は例外を除きウイルス単体で起こることは少なく、ほとんどの場合細菌とウイルスの混合感染によって起こっているといわれています。
肺炎症状がみられるときには抗生剤による治療が必要です。
なお、細菌が肺組織に”巣”を作っていしまうと慢性肺炎という状態となります。
こうなると抗生剤を投与しても熱が下がらない、良くなったり悪くなったりを繰り返すという非常に厄介な状況になります。
マイコプラズマは肺炎だけではなく、中耳炎の原因にもなります。
大発生して苦労している農場も少なくありません。
逆に、発生しない農場では全くといっていいほど発生しません。
中耳炎になると耳を洗浄しなければいけませんし、治療が長引くことが多いので、バケツ洗浄や牛床消毒の徹底など予防に力を入れることが大切です。
環境要因
環境要因は、子牛の要因と病原体の要因を増強するもの、または発生源になるものです。
どういうことかというと、たとえば過密な環境に置かれた子牛がストレスで免疫力を低下させたり、換気の悪い牛舎であるためにウイルスなどが空間中に滞留したり、ということです。
今回は子牛側に影響を与える環境要因と、病原体側に影響を与える要因の両面から列挙していきたいと思います。
すべてを解決することができる方はほとんどいないでしょう。
しかし、これらの要因を最小限にして可能な限り病気になりにくい環境を目指したいものです。
まとめ
今回は肺炎になる原因について解説しました。
次回に続きます。
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