【怖い慢性肺炎】子牛のカゼと肺炎 原因と予防

子牛
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はじめに

前回は子牛が肺炎になる3つの要因について解説しました。

今回は、まずカゼと肺炎がどう違うのかと、肺炎を予防する方策について解説します。

すべての肺炎はカゼから?

カゼと肺炎の違い

「そもそもカゼと肺炎ってどう違うの?」と改めて聞かれると、はっきり答えられない方も多いのではないでしょうか。

カゼがひどくなったのが肺炎」のようなイメージを持っている人も多いようですが、これは半分正解ともいえます。

予防法の前に、カゼと肺炎の定義についてお話しようと思います。先に言ってしまえば、カゼと肺炎のにはっきりとした境界はありません

日本呼吸器学会によると、カゼとは以下のとおりです。

一般に鼻腔から喉頭までの気道を上気道といいますが、かぜ症候群は、この部位の急性の炎症による症状を呈する疾患をいいます。時として、この炎症が下気道(気管、気管支、肺)にまで波及していくことがあります。

かぜ症状群の原因微生物は、80~90%がウイルスといわれています。

日本呼吸器学会 https://www.jrs.or.jp/ より一部抜粋

つまりおおざっぱにいえば、「カゼとはウイルス(や細菌)による鼻や喉(と下気道)の炎症」ということになります。()が多くてなんともはっきりしないですね。

一方で肺炎とは、文字の通り「肺」の「炎」症です。カゼの症状も一部は肺炎といえますね。

まとめてBRDC(牛呼吸器症候群)

このようにカゼと肺炎の境界はあいまいといえます。そのため、獣医学的には牛のカゼや肺炎を総称してBRDC(牛呼吸器症候群)と呼んでいます。

治療法についても、肺炎があるかないか、ウイルスか細菌かといった詳細な区別はせずに抗生剤による治療を行います。これはやみくもに治療しているわけではなく、肺を細菌感染から守るのが最重要ということは変わらないからです。たとえウイルスのみの感染であったとしても、放置しておくと細菌が混合感染し重症化するので、その前に抗生剤を使う必要性があります。

肺炎になるパターン2つ

子牛が肺炎になるパターンで多いのは、以下の2つです。

  • BRDCの一部
  • 誤嚥性肺炎

BRDCの一部というのは上述したとおりです。感染を起こすと上気道のみの炎症で済むこともありあますが、肺にも炎症を起こし肺炎となることもあります。鼻水や発熱といった上気道の症状に加えて咳などの肺炎症状がみられた場合にはこのパターンが多いです。

誤嚥性肺炎は気道に水などが入ることによる肺炎です。私が遭遇したことのあるケースの中で、子牛が誤嚥するのはほとんどが難産で胎水を誤嚥、または人工哺乳でミルクを誤嚥という2つのパターンです。一時的な炎症で治まることもありますが、大量に誤嚥していると細菌感染をともなって後述する慢性肺炎に進行することがあります。

一番怖いのは慢性肺炎

上に述べたようなカゼや肺炎の発生はいくら予防していても防ぎ切ることができるものではありません。上記の肺炎は一般に「急性」疾患に分類されます。これらの段階で治癒すればほとんど後遺症も残らず、再発の心配もせずに済みます。

しかし、これが「慢性肺炎」となったとき、子牛の先行きがかなり怪しくなります。子牛は繰り返し熱を出し、咳は止まらず、発育は遅れがちになることも。

慢性肺炎とは、急性肺炎にかかったもののうち、病原体を排除しきれなかったり肺の組織に損傷が残ってしまった場合を指します。これは子牛の免疫力が低かったり、治療の開始が遅れたり、使用する抗生剤が適切でなかったりすることに起因します。

慢性肺炎の予防対策

慢性肺炎になるには、2つのステップがあります。

  1. 急性肺炎になる
  2. 慢性化する

この2つの段階をそれぞれ予防することで慢性肺炎にならない子牛生産を目指しましょう。

まずはBRDC対策

前回お示しした3つの要因を制御することが重要になります。

子牛を強化し、病原体を排除するための牛舎を作ることが重要となります。

子牛側に影響を与える要因
  • 血統の分散(遺伝的要因)
  • 充分な初乳摂取
  • 栄養状態の向上
  • スペースにゆとりを持つ(↔過密)
  • 保温・冷却(↔寒冷・暑熱)
  • 通気(↔換気が悪い)
  • 牛床の乾燥(↔牛床が濡れている)
  • 社会的ストレスの分散、軽減(移動、群変更、同居牛とのミスマッチ)
病原体側に影響を与える要因
  • 通気(↔換気が悪い)
  • 清潔な牛床(↔牛床が汚れている)
  • 消毒の徹底

慢性化させないために

肺炎にかかってしまった、またはカゼを引いてしまった段階でできる限り早く治療を施すことが肝要です。そのためには、早期発見がかかせません。以下のチェックポイントで子牛の様子を確かめましょう。

肺炎の早期発見チェックポイント
  • ミルクを飲んでいるか、飲みが遅くないか(人工哺乳の場合)
  • 母牛の乳房が張っていないか(自然哺乳の場合)
  • 寝ている時間が長くないか
  • 鼻水を垂らしていないか
  • 震えていないか
  • 呼吸が速くないか

これらに気づくためには普段から子牛を観察し、正常を知っておくことが重要です。正常がわからないと異常に気づくこともできません

そして気になる様子の子牛を見つけたらまずは体温を測りましょう。少し捕まえて体温計をお尻に差し込むだけです。1分で測れます。これを面倒がると後々余計に面倒なことになります。

熱がある(39.0℃以上)ようなら獣医師に連絡しましょう。もちろん、熱はないけど様子がおかしいときもためらわずに呼びましょう。早期治療は子牛だけでなく、自分や獣医師の手間とコストを削減するためにも必要なことだと覚えておいてください。

まとめ

☑牛の場合、カゼと肺炎の区別をするのは難しいのでBRDC(牛呼吸器症候群)と呼んでいる。

☑危険な慢性肺炎にかからないためには、BRDCになりにくい環境を作ること、病気を早期に発見し治療することが重要。

以上のことを心に留めて健康な子牛育成に取り組みましょう。

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