【繁殖和牛の飼料設計】TDNとCPのバランスをとる”NR”とは?

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今回の記事では、岐阜県農業大学校の中島敏明先生が作成した飼料設計計算表”かつどんくん”を基に解説します。

繁殖雌牛の簡易飼料計算表 「かつどんくん」のページ

非常に有用なソフトですのでぜひ利用してみてください。エクセルがインストールされているパソコンであれば自由に無料で使用することができます。

今回はNRとは何か、NRをどのように調整するべきかを繁殖牛のライフサイクルごとに解説します。

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NR(Nutrition Ratio;栄養比)とは

NR(Nutrition Ratio;栄養比)は次の式であらわすことができます。

NR = (TDN – CP) / CP

CP:粗タンパク質、TDN:可消化養分総量

なんのことだがよくわからないと思いますので、ごく簡単に説明します。

要するに、「ざっくりタンパク質とカロリー(炭水化物)の比率」です。

最適なNRとは

「かつどんくん」HPの中では以下のように解説されています。

繁殖雌牛には、

①雌牛自身の維持のため、②胎子の成長のため、③授乳のため、

の3種類の栄養が必要です。

(中略)

①の場合NR5、つまり「炭水化物:タンパク質=5:1」という比率の飼料給与が推奨されていると言うことです。

②と③についても見ていくと、どちらも概ね「炭水化物:タンパク質=3:1」で、①に比べてタンパク質が多めに必要だと言う事が分かります。

繁殖雌牛の簡易飼料計算表「かつどんくん」のページ

上の記述がNR調整の全てですが、以下詳しく解説したいと思います。

繁殖和牛では維持期、妊娠末期、授乳期の3つのライフサイクルに分けて飼料設計を行います。

それぞれどのような時期なのか、どの程度の栄養が必要なのか見ていきましょう。

繁殖牛のライフサイクルと必要な栄養のイメージ

維持期

維持期とは、授乳が終わってから妊娠の後期までの期間をいいます。

名前の通り、自分の体を”維持”することにほとんどの栄養が使われます。

人工哺乳をしている農場では分娩の直後から維持期に入ります。

上述した通り、維持期にはNR=5を目標にTDNとCPのバランスをとります。

体重によって必要な量が変わりますが、体重450kgの場合、CP 479g、TDN 3020g(NR=5.3)が必要であるとされています。

この必要量はあくまでも目安なので、NR=5キープしつつ、母牛の状態を見ながら量を調整することが大切です。次回紹介する、よく使われる飼料の中から丁度いい組み合わせを選ぶようにしましょう。

維持期のバランスが崩れていると妊娠末期や授乳期の設計も狂ってしまうである程度厳密に計算することが求められます。

また、自家牧草などを使用している場合には飼料分析するのがおすすめです。

牧草の種類によってだいたいのCPやTDNは推定できますが、分析すると全く異なる結果がでることもあります。

これは追肥の量や刈り取りの時期などに影響されるのでしっかり管理したい方はかかりつけの獣医師や飼料会社にご相談ください。

妊娠末期

妊娠末期は妊娠期間のうち、最後の2ヶ月のことを呼びます。

妊娠末期には胎児の成長が早くなり要求される栄養が多くなるため、維持期よりも配合飼料などで多くのタンパクを給与する必要があります。

妊娠末期には維持期の飼料に加えて、CP212g、TDN830g(NR=2.9)が必要です。

この要求量を満たす飼料としては、繁殖配合1.2kg、ふすま1.3kg、ヘイキューブ1.7kgなどが過不足なく補給できるようです。

いずれの飼料も手に入りやすく、使いやすいのでどれを使ってもいいと思います。

維持期の飼料から徐々に増やし、1週間ほど時間をかけて上記の量まで増飼しましょう。

授乳期

授乳期はその名の通り、子牛に乳を与えている期間です。

一口に授乳期と言っても、分娩後1ヶ月と5ヶ月では泌乳量が全く違うので、当然ながら必要な栄養の量が変わってきます。

黒毛和種における自然哺乳の場合、分娩後約2~3週間で泌乳量がピークの約7kgとなり、その後徐々に減少して5ヶ月後には4kgまで落ち込むとされています。

泌乳量1kgに対して必要となる栄養はCP 97g、TDN 360g(NR=2.7)なので、推定される泌乳量の分だけ飼料を追加するようにしましょう。

授乳期は配合飼料を追加給与するのがもっとも楽です。

配合飼料の多くがNR=3.3ほどで少し高くなってしまうので、気になればヘイキューブなどで調整するのも一案かと思います。

授乳期はヘイキューブや粗飼料のみで追加給与すると、大量の飼料が必要になるのであまりおすすめしません。

泌乳初期に配合飼料3kg(CP 480g、TDN 2100g)程度から4kg上限あたりで母牛のボディコンディションを見ながら調整するのが良いでしょう。

離乳に向けて漸減していき、完全離乳したときには維持期の構成に戻す感覚で減らします。

この時期は同時進行で種付けも考えなければならないので、母牛のボディコンディションや発情回帰の具合などをしっかり観察することが重要です。

発情が来ないときは、獣医師にどのような状態か診断してもらい、配合を増やすべきか、減らすべきか、維持するべきか助言を求めるようにしましょう。

計算に囚われすぎず、柔軟に調整できると良好な繁殖成績につながると思います。

まとめ

NRとは、タンパク質と炭水化物の比率のことです。

維持期にはNR=5程度に保ち、妊娠末期と授乳期にはNR=3程度の餌を追加することで、CPとTDNを良好なバランスに保つことができます。

維持期の飼料はきちんと計算してNR=5を狙いましょう。NRの高い(TDNの高い)飼料と低い(CPの高い)飼料が手持ちの飼料にあると調整しやすくなります。

妊娠末期と授乳期には維持期の飼料にヘイキューブや配合飼料といったNRの低い(CPの高い)飼料を上乗せしていきます。

特に授乳期は種付けをしなければいけないので、計算も大事ですが、牛を見て柔軟に調整することが大切だと思います。

今回は以上です。何かの参考になれば幸いです。

ありがとうございました。

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