【繁殖和牛の飼料設計】よく使う飼料のNRを知ろう

繁殖
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前回はNRの概念やかつどんくんについて解説をしました。

今回はより詳細に、よく使う飼料のNRについてお話したいと思います。

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なぜNRを把握することが重要なのか

正しい飼料設計のためには、自身の使っている飼料がどのような性質のものなのかを知ることが重要です。

現在使っている飼料の特性がわかれば、牛群の状態から飼料設計を微調整することもできます。

以前にも述べましたが、TDNやCPの過不足は繁殖成績に重大な悪影響を及ぼします。

TDN、CPの過不足による問題
  • TDN不足による問題
    • 母乳成分異常による子牛の下痢
    • 卵巣静止
  • TDN過剰による問題
    • 過肥
    • 卵胞嚢腫
  • CP不足による問題
    • 鈍性発情
  • CP過剰による問題
    • 卵胞嚢腫

以上は一例であり、充足度と牛群に現れる現象が一致しない場合もあります。

特に卵胞嚢腫に関しては発生の仕組みが複雑で、実は本当の原因はあまりよく分かっていません。

しかし、問題を抱えている農場ではTDNとCPをうまくコントロールできていないことが多いのも事実です。

そのような牛群では状態に応じた変更が必要になります。

たとえば、卵巣精子の牛が多く痩せた群ではビートパルプを増やしてTDNを高めてやろう、といった具合ですね。

それではNRの高い飼料から順番に見ていきましょう。

よく使う飼料とNR

NRの高い(TDNが高い)飼料

NRの高い飼料
  • 稲わら
    • CP 47g/kg, TDN 376g/kg, NR 7.0
  • ビートパルプ
    • CP 85g/kg, TDN 763g/kg, NR 6.9

出典:日本飼養標準 肉用牛編 2008年版

稲わらはCPが低くTDNも高くない粗飼料です。

手に入りやすい地域とそうでない地域がありますが、粗飼料の中心に据えている方も多いかと思います。

太りにくいので乾物摂取量を充足させやすい反面、他の飼料をうまく利用しないとNR以前にTDN、CPとも不足してしまいます。

母乳の成分異常により子牛に下痢を引き起こすこともあります。

子牛の調子が悪いときには母牛の栄養状態も気にかけましょう。

ビートパルプはペレット状の飼料で稲わらに比べれば重量あたりのTDNもCPも高いことがわかります。

中心に据えて飼料設計するというよりもNRを微調整する際に使いやすい飼料です。

濃厚飼料に分類されますが、繊維分が多く粗飼料に近い特徴も持ちます。

後述するオーチャードなどCPがやや高めの粗飼料と相性がよく、NRのバランスをとるのに重宝します。

ただしカロリーオーバーには要注意です。

バランスの良い飼料

バランスの良い飼料
  • チモシー
    • CP 87g/kg, TDN 538g/kg, NR 5.2(出穂期乾草)
  • イタリアン
    • CP 97g/kg, TDN 534g/kg, NR 4.5(出穂期乾草)
  • オーチャード
    • CP 109g/kg, TDN 503g/kg, NR 3.6(出穂期乾草)

出典:日本飼養標準 肉用牛編 2008年版

いずれもイネ科牧草がですが、品種により特徴がやや異なります。

チモシー、イタリアンは量を増やしてもNRがあまり崩れないのが特徴です。

かと言って自由採食させると単純にカロリー過剰で過肥牛となってしまうので、制限採食が基本です。

また、今回の本題とは話が逸れますが、自由採食は牛群内での力関係が大きく影響するため、過肥の牛と削痩の牛の差が大きくなります。

代謝プロファイルテストを行っても、個体差が大きすぎて飼料設計を考察するのが難しくなりますのであまりおすすめできません。

オーチャードはCPが高めで、NRの高い飼料の部類に入れてもいいかもしれません。

こちらも飽食させると過肥で卵胞嚢腫が多発する牛群になること請け合いです。

私の知っている農家さんは、維持期の母牛は飼槽を舐め回すくらいが丁度いいと言っていました。

そのくらいの心持ちが良い加減なのかもしれません。

ここで紹介した粗飼料は自家牧草として採取している方も多いのではないでしょうか。

前回でも少し触れましたが、自家牧草は特に追肥の量などで栄養の構成が大きく変わってしまうので、飼料分析なしに設計を決めてしまうのは危険です。

私の以前いた地域でも、自治体で採草地を持っておりオーチャード乾草を農家さんに販売していましたが、飼料分析をしてもらうと、上記のような傾向は見られず、むしろNRの高い飼料であることが分かりました。

特性が分かれば対処もできるのでぜひ飼料分析してもらいましょう。

NRの低い(CPが高い)飼料

NRの低い飼料
  • ヘイキューブ
    • CP 147g/kg, TDN 493g/kg, NR 2.4
  • 大豆粕
    • CP 450g/kg, TDN 768g/kg, NR 0.7

出典:日本飼養標準 肉用牛編 2008年版

上記には記載していませんが、繁殖用配合飼料はたいていの繁殖農家さんが使用しているかと思います。

飼料袋の裏に栄養比率が示してあることが多いので参照してください。

袋には「TDN:〇〇%以上」のような書き方をされていることも多いですが、〇〇の部分を10倍すれば1kgあたりのg数を求めることができます。

ちなみに一例ですが、おおむね以下のような成分のバランスになっている飼料が多いです。

繁殖用配合飼料(一例):CP 160g/kg, TDN 690g/kg, NR 3.3

ヘイキューブはアルファルファヘイをキューブ状に固めた飼料です。

ビートパルプと同様、主力にして飼料設計するものではありませんが調節性に優れているため重宝します。

必要な量を吟味して追加給与しましょう。

大豆粕はCPの高い飼料の代表格ですが、数値を見ても分かる通り、CP、TDNともにかなり高いです。

CPの不足している牛群では貴重なタンパク源となり得る一方、給与量の調節がうまくいっていないとタンパク過剰の設計になってしまいます。

過剰は不足よりも補正に時間がかかることが多いので、より注意が必要です。

まとめ

飼料の特性がわかれば使い方が見えてきます。

まずは粗飼料の分析をして、必要になりそうな購入飼料の見当をつけるのが最初のステップになります。

繁殖和牛は繁殖成績が最重要であり、飼料設計は繁殖成績を上げるための肝となる部分です。

今回はNRの高いもの、バランスの良いもの、低いものとそれぞれ紹介しました。

NR別のよく使う飼料
  • NRの高い飼料
    • 稲わら、ビートパルプ
  • バランスの良い飼料
    • イタリアン、チモシー、オーチャード
  • NRの低い飼料
    • 繁殖用配合飼料、ヘイキューブ、大豆粕

最終的には試してみてバランスを調整する必要がありますが、だいたいの成分が把握できていると設計も捗るものです。

自分の農場に合った最適な飼料設計を目指しましょう。

今回は以上です。ありがとうございました。

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